agedbeginner’s diary

プログラミング・IT業界、シングルマザーの経済的自立に関することその他について発信

IT人材育成はどうなっているのか

日本政府の人材育成戦略

 前回のブログで述べたように、経済産業省の報告書からは、大量に不足するIT人材をどのように育成するのかについての具体的対策を読み取ることができなかった。

 そこで、日本におけるIT国家戦略を技術面・人材面から支えるために設立され、情報処理技術者試験も担当している独立行政法人情報処理推進機構IPA)が、IT人材の育成についてどのようなビジョンを持っているかを調べてみた。

 IPAのHPに飛ぶと、「IT人材育成事業」として、筆頭に「クラウドの利活用促進のための自立的なネットワーク形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等」(2013年)というものを掲げている。

 ところが、その内容を読んでみると、中小企業でクラウドコンピューティングを推進するという話をしているだけで、人材育成とは何の関係もないことがわかり、本当に驚いた。

 関連してイベントなどもやっているようだが、昨年度は「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」の説明会をやったりする程度のことしかしていない。

ITスキル標準化について

 次に、スキル標準への取り組みという項目があり、その中でITスキル標準ITSS)というものを設定している。簡単に言うと、エンジニアとして要求されるスキルの標準を定めているものだ。

 そこで、HPに登載されている「ITスキル標準V3 2011」(←8年前 !)というものに目を通してみたところ、この中のスキルのレベル評価と情報処理技術者試験との間で整合性が取られており、標準レベル1〜4の中では、基本情報技術者試験がレベル2に、応用情報技術者試験がレベル3に対応することが明示されている。

 ちなみにITスキル標準レベル2とは、「チームメンバとして、上司の指導 の下に担当作業にかかる技術を理解し、作業の一部を独力でできる人材」(早く言えば、「駆け出しエンジニア」)とされ、レベル3は、「チームメンバとして与えられた業務を独力で遂行できる『実務能力』を有する人材」とされているから、このレベル2をクリアすること、つまり基本情報技術者試験に合格することがエンジニアとしての第一歩という位置付けだ。

 ちなみにレベル4は、「専門領域が確立し、チームリーダとして部下を指導し、スキルや経験を活用して要求水準を満たす成果をあげることができる人材」であり、高度試験(ITストラテジスト試験、システムアーキテクト試験、プロジ ェクトマネージャ試験、ネットワークスペシャリスト試験、データベースス ペシャリスト試験、情報セキュリティスペシャリスト試験、ITサービスマ ネージャ試験等)がこれに対応する。

基本情報技術者試験の中身

 そこで、基本情報技術者試験(FE:Fundamental Information Technology Engineer Examination)について目を移すと、そのシラバス(試験範囲とでも言っておこう)は次のようになっている。

 まず、大きくテクノロジ系とマネジメント系に分かれており、テクノロジ系はさらに①基礎理論、②コンピュータシステム、③技術要素、④開発技術に分かれていて、いわゆるコーディング系は①の中の「アルゴリズムとプログラミング」で出てくる。

 これを詳しくみてみると、プログラミング言語でコーディングが問われるのはC、JavaPython(なんと昨年まではPythonの代わりにCOBOL!が入っていた)ときたあとアセンブラ表計算ソフト(!)であり、日本ではそれなりの勢力を持つRubyがないどころか、今日のWebの世界においては必須であるJavaScriptや共同開発必需品のGitに関する話すら出てこない(OSSのところでなぜかjQueryとして顔を出したり、スクリプト言語の紹介のところでECMAScriptとして一応出てはいるが、Gitを知らなくても平気なのか!?)。

 いわゆるWebフレームワークは、ミドルウェアの「開発フレームワーク」という扱いであるが、フレームワークを使ったコーディングという話はないから、もちろんRailsという言葉すら出てこない(フレームワークの名前一つ知らなくてどうやって面接通るんだ!)。

ミスマッチの正体

 そうすると、企業側がエンジニアを採用する際に最も重視するコーディング技術とかチーム開発におけるスキル・経験などは、結局のところこの試験では全く測定されず、就職時にこの資格が全く相手にされていない現実も理解できるというものだ。

 私のこれまでのプログラミングスクールに関する9回にわたるブログを読んできた方ならもうお分かりであろう。

 要するに、国家資格などは全く基礎知識偏重で、企業側が即戦力として求めるコーディングや開発実務能力に関する指標に全くなっておらず、本来その隙間を埋めるはずのプログラミングスクールの多くが明るいイメージだけを振りまきつつ粗製乱造するので、いつまでたっても必要とされるエンジニアが供給されないということになり、企業が成長を見越して若年者を青田買いするほかない状況になっているのである。