agedbeginner’s diary

プログラミング・IT業界、シングルマザーの経済的自立に関することその他について発信

IT業界の悩みとは

IT業界の人材問題

 私は、この業界の門外漢に近い初心者ではあるが、一応周辺者ではあり関心は高いので、少々調べてみた。

 2020年問題と言われるほどIT業界の人で不足が叫ばれているそうだが、経済産業省の委託事業としてみずほ情報総研が昨年発表した「IT人材需給に関する調査」によると、(単に人口減少という問題にとどまらず)IT分野では技術進展が著しく需要構造が変化し、人材に求められるスキルや能力が変化するため、需要構造に対応したIT人材を確保することが難しいということが根底にあるようで、AIやビッグデータ関係を特に強調している。

 これに先立つ2016年の経産省による「IT 人材の最新動向と将来推計に関する調査」では、2030年(あと10年ですよ!)には最大約79万人の人材が不足する虞があるとしており、年を追うごとに人材不足感が高まっていることがグラフを読んでもはっきり見て取れる。

 実際、先日私が参加したあるプログラミング言語のイベントでは、協賛会社がいくつもあり、飲食物まで提供していただけでなく、全ての会社で採用告知があり、その口調が、単なる「募集中」ではなく、「助けてください」になっていることが、逼迫状況を如実に示していた。

で、どうするのか

 実は、最初に触れた2018年の報告は、需給に関する調査報告でしかなく、この需給ギャップをどのように解消するのかについて全く触れていない。

 2016年の調査報告では、①より多様な人材の活用促進、②人材の流動性の向上、③個人のスキルアップ支援の強化、④処遇・キャリアの改革(産業の魅力の向上)、⑤重点的な強化が必要なIT人材に関する取組、を対策として掲げているが、筆頭の①は、要するにシニア・女性・外国人人材の活用という、人手不足の話ではどこにでも出てくるありきたりな題目が掲げられているだけで、そんなことできるのかとか、どうやってするのかということすら書かれていない。

 そもそも技術の流動化が激しいため人材不足に陥っていると言っておきながら、業界の年寄(失礼)をもっと活用と言うことに自己矛盾を感じないのだろうか?②も各産業共通の人口減が背景にあるので、一般論でしかなく(特に、新規参入の障壁が高いエンジニア業界では)説得性がない。

スキルアップ支援の強化?

 ③のスキルアップ支援の強化では、個々のIT人材の生産性を高めることを掲げている。この調査によると日本のIT人材は、会社の教育・研修制度や自己研鑽支援制度に対する満足度がかなり低いほか、「自主的に勉強している」と回答した割合も最も低いという事実を指摘しているが、そもそもこれだけの需給ギャップを個人の生産性向上で乗り切るのは無理に決まっている。

 にも関わらず、この項での締めくくりは、「個々のIT人材に対する十分な教育・研修の機会を、企業が自社だけで提供することは、もはや難しくなっている。IT人材個人は企業が提供する機会・手段を十分に活用するだけではなく、自ら積極的に学習の機会・手段を模索し、活用することが重要」ですって。それでも国の対策ですか?委員はバカを揃えたんですか?

処遇改革について

 ④の処遇改革とは、産業の魅力を高めること、要するに報酬・賃金を上げることだが、「各国比較調査の結果を見ても、日本のIT人材の給与に対する満足度は非常に低い」としており、その指摘自体は(先だって私が書いたスタックオーバーフローの調査結果に照らしても)おそらく正しいだろう。

 しかし、そこには、「じゃ、どうするか」という話は出てこない。

 確かに、各企業努力が基本に横たわるが、国としての施策が全くないのは、調査報告だからか?しかし、この項は、「提言」の項だからもう少し踏み込んでくれないと話にならない。

IT人材の強化とは?

 ⑤の重点的な強化が必要なIT人材に関する取組は、実は2つに分かれており、「先端IT人材・情報セキュリティ人材」に対する取り組みと、「IT起業家人材」に対するそれとからなる。

 まず、後者については、「日本発のITベンチャーの起業・成長の促進と、我が国のIT関連産業の変革に向けて、さらなる意欲の喚起や環境整備」だそうだから、これもあまりにありきたりな救世主待望論。

 私の関心としては前者なのだが、一応全部引用すると

  • 先端IT人材を含むIT人材の新たなフレームワークの整備
  • 優秀なIT人材に対する適切な処遇
  • 外国籍IT人材を含むグローバルな規模での優秀な人材の確保
  • 大企業とITベンチャーとの連携促進
  • 大学等の高等教育機関での専門教育の強化

 やっと最後の最後で養成の話が出てきたが、上記のとおり「先端人材の話」であって、通常のIT技術者の大量養成の話は、実は出てこなかったのだ。